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オール電化住宅をやめよう (2)

オール電化住宅の要であるエコキュートはヒートポンプを使って空気中の熱をくみ上げ、その熱でお湯を沸かします。ただし、ヒートポンプであるので普通のエアコンと同様にコンプレッサー(空気圧縮機)を動かす必要があり、その動力に電力が使われています。使われた電力に対してくみ上げられた熱の割合を成績係数(COP)と言い、このブログでもしばしば取り上げてきている数値です。エコキュートのCOPは4程度なので、使った電力の4倍の熱で温めることができます。普通の電気給湯器の4倍の効率であり、だからエコだ、というのがそのアピールポイントになっています。

さて、問題はエコキュートがいつお湯を沸かすのか、です。一般家庭の給湯需要は入浴や炊事が行われる夕方から夜にかけて高くなります。ところがエコキュートがお湯を沸かすのは深夜から早朝にかけてです。夜中に沸かしたお湯を日中そのままためておいて、夕方から夜に使うという仕組みになっているのです。

子供でもわかることですが、お湯をためておくと次第に冷めます。これはお湯に与えた熱がまわりに逃げて、拡散することで起きます。断熱材などを使えば、熱の逃げる量を減らし、冷めにくくすることは可能ですが、逃げ出す熱を0にすることはできません。逃げ出す熱は時間とともに増えるので、お湯を使う直前に沸かすのが最も効率がよいやり方です。

にもかかわらず、エコキュートが夜中にお湯を沸かすのは、電力を供給する側が1日の電力需要を平準化したいと考えているからです。日中は工場や鉄道が稼働しているために電力需要が大きく、その時間にはあまり電気を使ってほしくないのです。そこで、需要の少ない深夜帯の電力料金を大幅に割り引いて、そちらで使うと経済的に得をするように誘導しています。

実際に、通常の電力料金は1kWhにつき21円程度ですが、東京電力のオール電化向けの電気料金メニューである「電化上手」では、午後11時から午前7時は1kWhにつき9円程度となっています。「電化上手」では逆に日中の電力料金は割高にしており、午前10時から午後5時までは、夏で33円程度、その他の季節で28円程度です。このような料金体系であれば、熱が逃げる無駄が生じたとしても、夜中のうちに多めにお湯を沸かしておいた方が料金が安くなる訳です。

電力会社が1日の電力需要を平準化したいと考えるのは自然なことです。電気はためることができないため、電力会社は1年のうちでもっとも需要が多い瞬間に合わせて発電設備を整備しなければなりません。しかし、それより需要が低い時間や低い季節ではせっかく整備した発電設備を止めています。施設稼働率を上げるには需要が平準化するのに越したことはないわけです。

さて、それでも電力需要は刻々と変動しますので、電力会社はその変動に合わせて発電量を調整しています。その調整の役割を担うのが石油や天然ガスを燃料とする火力発電所です。燃料を送り込む量を変えることで出力を変えられる火力発電所は、需要がピークを迎える時間帯はフル稼働していますが、需要の減る深夜にはその大部分が運転を停止しているのです。

一方で、原子力発電はそのような小回りが利きません。一度運転を始めると、ずっと同じ出力で運転を続けることになります。原子力発電の核燃料は一度装填すると、数年間使い続けることになり、その出し入れで調整などということはできないのです。そのようなわけで、原子力発電の役割はベース電力の供給ということになっています。したがって、日中使われる電力では火力発電の割合が高く、深夜に使われる電力では大半が原子力発電による電力となっています。(下図参照:「佐賀県の原子力安全行政」サイトにあった図より引用)

電力需要曲線.png

したがって、電力需要の平準化が進み、時間帯による電力需要の差がなくなってくると、電力会社は原子力発電の割合を高めることができます。原子力発電は燃料費が余りかからないので、「原価の安い電力である」ということになっています。したがって、平準化を進めるためなら、安い料金で電力を提供したとしても、電力会社は利益を得ることができるのです。

したがって、電力会社にとってはピーク電力が高くならないようにすることも大切ですが、夜中の電力需要が低くならないようにすることがそれ以上に重要です。省エネが進んで夜中の電力消費が減ってしまうと、原子力発電を止めなければならなくなります。そうならないようにするために料金制度などで夜間の電力需要を高めるように工夫しており、エコキュートをメインとするオール電化住宅を環境にやさしいというイメージ売り込んでいたのも、その流れの一環なのです。

だから、もしあなたが原子力発電の推進に疑問を抱いているなら、オール電化住宅やエコキュートを選択するべきではありません。電力消費を平準化することそのものは悪いことではありませんが、それは深夜の電力需要を増やすことで実現するのではなく、ピーク電力を減らすことを目標とすべきです。エコキュートで昼の消費電力が減るのであれば意味もあるのでしょうが、もともとガスで消費していたエネルギーを電力に転換させているのでピーク電力を減らす役割は何ら果たしていないのです。

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